「ほ~ら。目を開けてごらん」「わ~!きれ~!素敵~!チュッ!」
20代の頃、「夜景」と聞くと何度も想像した会話である。当たり前だが一度たりとも、そんな経験をしたことはない。神様も一度くらい叶えてくれたっていいじゃんと思うときもあったが、実際に夜景を見た瞬間に、そんな考えは吹っ飛んでしまうのである。
夜景を見るシチュエーションも様々であり、展望室のように入場料を払って楽しむ夜景もあれば、小高い山の上や川縁などの自然の中で楽しむ夜景もある。ホテルの部屋からα波でまくり状態で見る夜景もあれば、バーやレストランから食事やお酒を楽しみながら見る夜景もある。どれも僕には、それぞれの楽しみ方があるようだ。
東京タワーや最近、復活したニューヨークのロックフェラーセンタービルの展望室のように入場料を払って見る夜景は、360度の夜景を眺めることができる場合が多く、そのダイナミックさは純粋に感動する。「この景色を人間が創ったんだなぁ」と思うと何故か恐ろしくなるときもあるのだが。小高い山や川縁などから見る夜景は、自然の音に身体をなじませながら夜景の中に包まれていく感覚がたまらない。
ホテルの部屋から見る夜景は、独り用のソファを夜景の方向に向け、部屋に備え付けられたミニバーからウィスキーの小瓶を取り出しグラスに注ぎ、何も考えずに、ただひたすらぼーっと夜景を眺めている。バーで楽しむ夜景は景色をつまみに会話を楽しむこともあるが、一人の場合は考えごとをしていることが多い。「何かをやろう!」と決めるときは何故だかこういったときが多い。
先日、お気に入りの夜景が加わった。JR札幌駅の上にできた展望室からの景色である。ニューヨークと同じ緯度にある夜景は、冬だったこともあるのだろうが空気が澄んでいて星を散りばめたような景色が広がる。そしてキャッシュオンのバーがあり、夜景に向かって贅沢な間隔で並べられた椅子に座って飲んでいるとホテルの部屋に居る感覚に近い。しかもトイレまでガラス張りというおまけつきなのだ。
「ほ~ら。夜景の写真だよ。さて、どれがシンガポールでしょう?」「どれかなぁ?いろいろな夜景の写真を持ってるのね?チュッ!」
もちろん、そんな経験はないし、今後も期待できそうにない。
イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
岐阜県出身。静岡大学理学部数学科を卒業するが先生になりそこね上京。映画、テレビ、演劇、イベント、出版、大道芸と様々な業界を渡り歩き、女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を経て、現在は(有)ホワイトマンプロジェクト代表。
ホ ワイトマンとは国内国外問わず、イシコの友達が白塗りをして、ショー、映像、本、 プロダクトなどを5年間限定で産み出して、遊ぶプロジェクト。MONOマガジンにて 「ホワイトマンの物生講座」連載中。
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