
「僕は、広島出身なんだ」
この台詞をスリランカのコロンボで聞くとは思わなかった。しかもスリランカ人の子供の口から飛び出したのである。お父さんが広島で貿易会社を立ち上げ、彼はそこで育った。今は、スリランカで暮らし、お父さんは日本を行ったり来たりしているのだそうだ。僕が尋ねる質問にひとつひとつ、丁寧に流暢な日本語で答えてくれる。
(写真上)悪ガキトリオ。いざカメラを向けると照れくさそうにした

彼のあだ名は「キンコン」。中学生の頃、同じあだ名のクラスメートがいた。こちらのキンコンはもちろん日本人である。その「キンコン」とどこか似た雰囲気が漂よっていた。小さくて、人懐こく、どこかおっちょこちょいで、どこかシャイだった。
基本的にスリランカ人はシャイだと言われている。無愛想なのではなく、シャイなのである。
逆にシャイではなく、すぐにフレンドリーに話しかけてくるスリランカ人は少し怪しいと思って間違いない。やたら声をかけてくるバジャージ(バンコクで言うところのトゥクトゥク)の運転手や、海辺を散歩しているとモルディブ出身だと声をかけてくる詐欺師など、本来はシャイだったのかもしれないが、いつしかシャイとはほど遠くなっているスリランカ人もいるのである。
(写真左)なかなか撮らせてくれなかった彼がようやくカメラに収まった
彼等がその土地で生きていくために手に入れた術なのだから、僕がとやかく言うつもりはない。こちらが気をつければいいだけのことである。と熱く語ってしまうのは僕自身が何度か引っかかっているからである。
だからこそ、シャイなスリランカ人とコミュニケーションが取れたときは嬉しくなる。たとえ、それが軍人であろうと。現在、テロが頻発しているコロンボでは、至る所に軍人が立っている。毎日、ふらふら散歩している日本人の僕は、確かに彼等からすると異様に映っただろう。顔を見る度に話しかけたそうだった。
(写真左)大人びていたが、質問するとなかなか話さない
(写真右)カップル達もどこかシャイで、傘で隠そうとする

遂にある日、僕に身分証明書の提示を要求してきた。もちろん彼等の仕事として調べるのだが、どうみても顔は興味津津である。
「このへんてこな日本人は、どうしていつも歩いているのだろう?」

本当は、そう聞きたいのだろうが、露骨には聞けない。
「このあたりカメラはノーね。シークレットな場所だから」
とカタコトの英語で、怒るわけでもなく、優しく注意する。そのシャイな優しさが伝わるコミュニケーションが心地いいのである。
(写真左)とにかく、いつも声をかけてきたバジャージの運転手達
(写真右)遠くからでも視線を感じる軍人
イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
岐阜県出身。静岡大学理学部数学科卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、現在は(有)ホワイトマンプロジェクト代表。 ホ ワイトマンとは国内国外問わず、イシコの友達が白塗りをして、ショー、映像、本、プロダクトなどを5年間限定で産み出して、遊ぶプロジェクト。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても注目されている。
イシコのセカイサンポ ホワイトマン公式Webサイト









