初めて「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショーを観たとき、隣の席に座っていた友人によれば、僕は最初から最後まで口を開けていたそうだ。中年のおじさんとしては褒められた表情ではないが、そのくらい何も考えることができなかったのだろう。単なるサーカスだと思っていた僕には予想以上のショーだったのである。
(写真上)どこかで右脳を刺激されている気がするのも好きな理由です
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次に彼らのショーを観たのはラスベガスだった。ちょうど世界一周中だった僕の予定表の中に、南米の街からいきなりラスベガスに移るとあったので、みんなから質問を受けた。
「なんで南米からラスベガスなの? すごく違和感があるんだけど…」
僕は迷わず答えた。
「ここでしか見られない『シルク・ドゥ・ソレイユ』のショーがあるから」
(写真左)目の錯覚かと思ってしまうことが時々、現れます。これは舞台自体が垂直になっているのです
こうして「O」と「KA」という二つのショーを拝見した。特に「O」というショーを観たとき、僕は何故か涙を流していた。中年のおじさんだろうが関係なかった。それにしても何故、涙を流したのか。決して特別なストーリーがあるわけではない。感動して泣くシーンというわけでもない。未だに理由はわからないが、こんな素敵なショーを観ることができる幸せで身体が自然に反応してしまったのかもしれない。
そして日本に一旦戻った僕は、「シルク・ドゥ・ソレイユ」の常設劇場がディズニーランドと提携して幕張にできるという話を聞いた。正式なオープンは10月だと言う。僕は既に次の旅に出てしまっている。どうしても観たかった僕にトライアル公演という本番に近いショーであれば観ることができると教えてもらった。もちろん出掛けて行った。観た直後に感想を聞かれた。
「素晴らしかった」
としか答えられなかった。中年のおじさんが素晴らしいという安易な言葉でしか表現できなかったことで罵倒された。確かにショーの感想は言えなかったが、これだけは言えると思う。どんなに忙しくても、どんなに険しい顔で過ごしていても、このショーを観たら優しい顔でこの劇場を出られるだろう。和ペリティーヴォなショーの幕が正式に開いたことを心からお祝いしたい。
特別表記のない写真全て / Tomas Muscionico Costume: Marie-Chantale Vaillancourt Copyright 2006 Cirque du Soleil Inc.
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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