10年程前、家族で世界最小の主権国家ヴァチカン市国を訪れた際、幸運にも故ヨハネ・パウロⅡ世を近くで拝見する機会に恵まれた。仏教徒の僕が初めて自然に胸で十字架を切ったのを覚えている。彼から出る和ぺティーヴォな空気感はその後も頭から離れなかった。
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と今月は決して彼のことを書こうというのではない。彼が祭儀のときなどにまとう「祭服」の中に博多織があったという話を聞いたのだ。細い経糸(たていと)を浮かせて柄を織り出す、日本が誇るあの博多織である。日本では生地に厚みと張りがあることから帯に適していると言われ、締めやすく緩みにくいことから日常的に和服を着る力士が愛用していることでも知られている。
と今度は博多織の話に移っていきそうだが、これまた少し違う。
実は博多織を学ぶ学校について書きたかったのである。ご存知のように全般的に伝統工芸と呼ばれる分野は現在、「継承」という面で様々な問題が出てきている。博多織の世界も、それは同じで若手継承者が減ってきている。そこで約2年前、「博多デベロップメントカレッジ」なる博多織の学校が生まれた。この学校は様々な業界で話題を呼び、国内だけでなく某有名海外ブランドが視察に訪れたこともある。
年に10人程度しかとらない少数精鋭教育のこの学校が面白いのは織る技術を学ぶだけではなく、商品をいかに売ったり、広めたりするかというプロデュース的な視点も養えるような授業も組み込まれており、講師陣も豪華なことである。
文化を守ろうという考えは一見、正しいように思えるが、「守る」「維持する」という考え方が強くなると保守的な物の見方になりがちである。昔ながらの技術を継承しながら、その時代を見据えた物創りはあっていいだろうし、どう広めていくかということもその時代ならではの手法があるはずである。その為には、この学校のようにプロデュース的なことを学ぶことも必要なのだと思う。
実際、生徒の方々と飲みながら話を聞いていると既に純粋に織ることが好きなクリエイター気質の方と、いかに世の中に広めていくかに興味があるプロデューサー気質に別れ始めているのがわかる。この学校が未来の博多織の大切な役割を担っていくことは間違いない気がする。何年先かは分からないが、卒業生が世界に向けて発信する博多織の和ペリティーヴォな世界観が今から楽しみでならない。
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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