いったい「扉」はいくつあるのだろう。こう書き始めるとなんだか「心の扉」の話でも書くような感じだが、残念ながら「家の扉」の話である。しかし、「家の扉」が迎え入れてきた家族の人生や歴史を想像すると、どこか和ペリティーヴォな気持ちになる。
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来年、オリンピックを控えた北京の街。世界一人生の数が多く、すなわち世界一扉の数が多いであろう国の首都である。天安門の大きな扉を見ていると歴史的な事件から現在、様々な国から訪れる観光客まで、様々な物を見てきたのだろうとねぎらいたくなる。そして、扉が見てきた様々な光景を想像しながら街歩きを始める。初めて訪れた北京の街の空気を身体に馴染ませていくのである。「身体に馴染ませる」と言っても、たいしたことはない。散歩しながら、聞こえてくる人々の言葉を浴び、信号や標識、公衆電話やゴミ箱など日本でも使用する物のデザインの違いを感じ、次第に人々が食べている物や身につけている物へと目線は移っていく。
こうして散歩を続けているうちに住宅街へと進んでいく。「家の扉」の始まりである。大通りとは全く違った人の生活の匂いが漂い始める。生活の匂いに誘われ、どんどん迷い込んでいく。迷い込めば迷い込むほど、北京の空気が身体に馴染んでくる。迷ったとしても、このあたりはさほど危険な場所でもないと聞いているし、特に急ぐ散歩でもない。大通りに出た時に地図で通りの名前を確認すればいい。
扉の向こうで人々はどんな生活を送っているのだろうかと想像しながら、カメラのシャッターを押す。不審者と思われない程度に。そのうち扉を開けたおじいさんに出くわす。
もちろん言葉は通じないが、笑顔でコミュニケーションをとる。カメラに興味を持っているようでデジカメの画面をのぞきこむ。そこには彼の人生をいつも迎え入れてくれる扉が映し出されていた。親指を立てて、去っていくおじいさんの背中を見ながらふと思った。オリンピックの後、彼等の人生は変化するのだろうか。きっとその変化もこれらの扉は見つめていくのだろう。
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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