モノレールの終着駅「サバーンタクシーン」駅を降り、少し歩いて水上バスに乗り込む。この水上バスに乗る度に美空ひばりの「川の流れのように」を思い出す。そう書くとゆったりしたきれいな川をイメージしそうだが、残念ながらチャオプラヤー川は汚い。しかも水上バス自体に風情は全くない。
(写真上)近代的なオフィスビルも突如現れる。そしてタイの国民が大好きなプミポン国王の写真も。安全祈願と魔よけの為に、先端に花をぶらさげる船は多い
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ただ、船内で飛び交うタイ語を聞きながら、川からの景色を見ていると妙に落ち着くのである。そして本来の意味合いとは多少、違うのだが、「生きることは旅すること」という歌詞の一部が頭に浮かび始める。
船はパーククローン市場の横を通り過ぎて行く。タイでは神様はもちろんのこと、船の先端など様々な場所に花を捧げるのだが、ここは、その花々が売られる市場として知られている。先日、この市場に立ち寄り、話を聞いた露店の花売りのおばちゃんは、もう何年も休んでいないそうだ。休みはないが幸せだとも言った。毎日、同じ時間を過ごせるということは、ある意味、彼女の言う通り、幸せなのかもしれない。
「川の流れのように ゆるやかに いくつも時代は過ぎて」
夕陽の風景が美しいことで知られるワットアルンの景色が見えてきた。ぼんやりかすんだように見えるのはスモッグのせいだろうか。明らかに数年前に来たときよりバンコクのスモッグがひどくなっていると思うが、それがワットアルンを更に幻想的に見せてくれる気がするのが何とも皮肉である。寺院の前を自分が流れていくような感じが心地いい。
「川の流れのように おだやかに この身をまかせていたい」
いつのまにか傍にお坊さんが立っていた。彼も僕と同じ光景を眺めていた。彼は何を思ってこの光景を見つめているのだろう。「この風景も“川らねぇ”なぁ。なぁんつって。駄洒落を言っちまったぜ」などと思っているのかもしれないが。
おっと、「ティアン」駅で降り損ねてしまった。ワットポーの寝転がった仏像でも拝もうと思っていたのだが、くだらないことを考えた罰があたったのかもしれない。まぁ、急ぐ旅でもない。身をまかせて、次の駅で降りてみることにしよう。僕はお坊さんにお辞儀をした。今年もよろしくお願い申し上げます。
(写真右)半水上生活の人達の家々の横を通ると「ここはまだ変わってなかった」とホッとする
(写真左)川を見つめていたお坊さん
(写真右)ワットポーの仏像
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
イシコのセカイサンポ
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