40歳を超え、そろそろ死について考え始めた……なぁんてしみじみとつぶやいてみたいものである。残念ながら、この歳まで自分の死について考えたことはない。というかなかった。笑顔が不謹慎とされる雰囲気、神妙なお焼香の風景など日本の葬式のイメージには、どこか「死」=「陰」のイメージが強い。「陰」を恐れる僕はどこかで死について考えることを避けていたのかもしれない。しかし、バリ島のように「陽」の部分を感じさせる葬式を見ているうちに少し意識が変わってきた。
(写真上)お供えを頭に乗せて闊歩する姿も美しいです。これらも全て後で燃やされます。
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イスラム教徒が大半を占めるインドネシアの中で、バリ島だけは90%以上がヒンズー教徒である。元々、ヒンズー王朝だったバリ島は、ジャワ島の王族の一部の移住で宮廷文化が入り込み、独特のバリヒンズーが出来上がった。オランダの植民地化の影響もあり、イスラム教の影響を受けないまま現在まで受け継がれている。
バリヒンズーでは死者を動物に乗せて送り出すとされ、ルンブーと呼ばれる動物の彫刻が家の前に用意される。死者を乗せる動物は白い牛、黒い牛、獅子などカーストによって分かれているそうだ。その牛の彫刻の後ろからはバデと呼ばれる塔がついていく。死者の亡骸はバデの上に安置されている。たいていは亡くなってからお葬式まで時間が空くので、先に土葬(何年後かにお葬式する場合)もしくは火葬して骨だけをバデに乗せることが多い。まるでお祭りの神輿のように掛声とガムランとが混じり合い、神輿を揺らしながら、賑やかに寺院まで進んでいく。十字路では死者が現世に舞い戻ってこないように、どこから来たかわからないようにルンブーとバデを回転させる。
(写真左)ヒンズーのカースト制度により死者の乗る動物が違います。ちなみに白い牛(お坊さん階級)、黒い牛、獅子か虎か象、魚の順番だそうです。
こうして寺院に到着するとバデの上の遺骨をルンブーの動物の背中に移動させ、一緒に運んできた供物も添え、様々な儀式の後、火をつけて送り出す。不思議に悲壮感はなく、輪廻転生への旅立ちを祝っているようにさえ思えてくる。燃やした後の灰は海に流し、その後はお墓も作らないそうだ。どこか心地よさが残る葬式だった。その余韻を感じ、地元のヤシの酒「アラック」を飲みながら、今、自分の死について考え始めたところである。
(写真右)死者が現世に戻ってこないよう、どっちから来たかわからないように十字路で回転させます。
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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