友人のカメラマンが亡くなってから1年が経つ。僕は彼女が撮る雲の写真が大好きだった。
「「だった」って過去形にせんといてよ。作品は残ってるやん!」
彼女はそう言いそうである。
(写真上)僕には犬が飛んで行きそうに見えるですが、あなたは何に見えますか?
バリ島(インドネシア)
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雲の切れ間から太陽の光が差し込む光景を見事にとらえた「天使の梯子」に自然の崇高さを感じ、どこでこんな世界が見られるの? と聞きたくなるような雲の絨毯に別次元を感じる。彼女が亡くなる直前に出版した雲の写真集を見てから、旅をしながら雲を眺める時間が長くなった。
当たり前だがその時、出会った雲の形は永遠ではない。かわいい犬に見える雲に出会うとこのまま残しておきたいなぁと思うが、それは無理というもので何分後かには流されて崩れてしまう。雲というのはまさに一期一会なのだろう。それは街歩きで見ている風景と同じである。僕が大好きな映画「スモーク」の中で、ハーヴェイ・カイテル演じる主人公が10年以上、毎日、同じ時刻の同じ場所で写真を撮影しているシーンがある。その時間のその場所、つまり今、自分が見ている風景はたとえ同じ場所でも二度とない。目に映り込む建物はたとえ同じでも、歩いている人や車を始めとしたその場所の空気感は違う。その延長に雲もある。
(写真左)ただいま雲8番目をロープウェイが通過しますと一人で実況しておりました。
サンチャゴ(チリ)
雲にはそれに加えて時空間を超えた想像をさせる力がある。何百年、何千年も前にここに住んでいた人は、今、僕が見ている鶏に似た雲と全く同じではないにしろ、似た形の雲を見て鶏だと思った人がいるかもしれない。ひょっとすると今、地球のどこかで、僕と同じように鶏に似ているなぁと思って雲を眺めている人がいるかもしれない。などと想像を膨らませていくと更に雲を見るのが楽しくなってくる。こうなってくると想像というより妄想に近いのだけれど。
一緒に旅行に行こうと約束していた彼女が、この1年の間、いつも旅先にいるような気がして、雲を見ている時に話しかけているときがある。
「あの雲よくない? 馬に乗っている騎士みたいじゃない?」
見えない彼女にそうつぶやく。
「勝手に近くにいるって決めんといて。私だっていろいろ忙しいんやから」
という声が聞こえてきそうだが…。
(写真右)未だにきれいな「天使の梯子」が撮れた試しがありません。今年は、カメラを持っているときにどこかで出会えますように。
ロンドン(イギリス)
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
イシコのセカイサンポ
ホワイトマン公式Webサイト
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