川に浮かぶ島全体が寺になっている場所がある。その島がある街へ1週間ほど行ってくると告げるとヤンゴンのホテルのスタッフは怪訝そうな顔をした。仏教遺跡で知られる「バガン」、古都の風情を漂わせる「マンダレー」、水上村のある「インレー湖」など、ミャンマーには、もっと素敵な観光地があるよと言った。しかし、僕は馬に乗ったような乗り心地の悪い電車に10時間程揺られ、モウラミャインという、ヤンゴンのホテルのスタッフ曰く“何もない街”にやってきた。
(写真)岸から見たガウンセー島。王朝時代、洗髪の儀式に使われた聖水がここの島の水だったため、地元の人は「シャンプーアイランド」と呼んでいます。
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一応、19世紀英領ビルマの頃、都でもあったこの街には夕陽が素晴らしいタンルウィン川とその川に浮かぶガウンセー島以外、特に何もなかった。しかし、それだけで十分、満足できる街だとも思えた。
さて、目的のガウンセー島は渡し船でしか行けないので、早速、交渉して渡ってみることにする。島に降り立つと住んでいるのか、ただ単に遊びに来ているだけなのかわからないが子供達が寄ってきてサンダルを脱げと言う。昔、暴走族に憧れていた友人の車に乗せてもらった際、「この車は土足厳禁だから靴を脱げ!」と言われたのをふと思い出した。裸足になった僕は子供達と一緒に島を探検するように歩いていく。これが仏陀の聖髪が納められているパヤーだよというようなことを片言の英語と身振りで教えてくれた。最初、2人だった子供が5,6人にまで膨れあがっていた。きっと最後にお金をせびられるんだろうなぁと何気なくポケットの中に入っている細かい紙幣を確認した。
(写真)丘の上にある寺院マハムニ・パヤーから見られる刑務所を眺めていた袈裟姿の若い僧侶は何を思ったのでしょう。
1時間程、歩いただろうか。別の子供が一人、走ってやってきた。帰りの船が出発するから急げと言っている。子供たちみんなで僕の背中を押して走り、船に乗せた。「お金は?」と思ったのだが、子供達は別にお金をもらい忘れたという表情でもなく、船着場から無邪気な笑顔で手を振り続けた。何だか少し恥ずかしい気持ちになった。結局、彼らが何者なのかわからないまま船は、僕は、この島を離れた。どこかで温かい気持ちになり、この街にいるとこんな自分でも少しは優しい人間になれるかもしれないと思いながら、彼らが見えなくなるまで手を振り続けた。
(右写真)ガウンセー島まで連れて行ってもらった舟の船頭の息子は、行きも帰りもこの場所に座っていました。
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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