岐阜の自宅で読書三昧の日々である。さっきまで床の間で焼酎をちびちび飲みながら「ハムレット」を読んでいた。焼酎とシェイクスピアという何とも不思議な組み合わせが自分だけの別の世界を作り出してくれる。味の記憶と文字の記憶が重なって不思議な記憶を呼び起こす。
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「あれ? ハムレット読んだ時に飲んでいた鹿児島の焼酎何だっけなぁ?」
焼酎を飲みながら、ハムレットを読んだ時の床の間の風景が蘇ってくるのかもしれない。
「この薩摩宝山飲んでいる時に、ハムレット読んでたなぁ」
四大悲劇の内容の区別ができなくなることが時折あるので、次は、この焼酎でハムレットを思いだせるかもしれない。
などと読書家ぶっているが、現在、執筆業を生業にしているくせに僕は三十歳になるまで、ほとんど本を読んでいなかった。以前、知人の大学教授が生徒向けにこれを読めばとりあえず文学の話ができる100冊の本のリストを作ったのだが、僕はそのリストの中の本を一冊も読んでいなかった。って自慢するようなことではないのだけれど。ともかく三十歳を超えて、文章を書くようになったせいか、それともようやく脳が本を欲求し始めたのかわからないが本を読むようになった。
シチュエーションフェチの僕は、たいてい書店に行くと読む本と一緒に飲み物や場所などのことを考える。これに合いそうな歴史小説でも買おうかなぁと手にしているワインを見ながら本を選ぶこともあれば、この翻訳物は縁側で庭でも見ながら読みたいなぁとシチュエーションを想像することもある。旅に持っていく本選びでも同じである。長い旅の時は荷物の関係で、どうしても電子本が多いが、短い旅に行く時は本選びの時間が旅先の服を選ぶように楽しい。
村上春樹の翻訳物に焼酎、古今亭志ん生の落語をまとめた本にバーボン、昭和初期の現代文学とリゾートホテル、ローリングストーンズの半生本と伊豆の温泉など、一見、合わなそうな組み合わせの本が意外によかったりする。違ったアプローチで思いだすので二倍楽しめる気がする。肝心の本の内容を忘れていたりするから困るのだけれど。
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イシコ
1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。
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