日本における難民政策
日本における難民政策

近年、日本では難民に対するマスコミの報道が下火となり一般的な日本人の意識からは「難民」の存在は薄れてきている。ところが日本でも難民問題は決して縁遠くはないはず。 日本はイラクに自衛隊を派遣している。そのイラクにおいては治安悪化をうけて、国連難民高等弁務官事務所(以下UNHCR)によると、2006年1月から11月半ばにかけ約42万5000人ものイラク人難民が、友人や親戚筋を頼って国外に流出している。UNHCRは逃亡先の社会での摩擦などを懸念しているという。また、イラク国内には2万人のパレスチナ難民や、キリスト教徒などの少数民族が残っており、治安の悪化に伴い脅威にさらされていることを警戒しているようだ。

こうした状況下で先日、アメリカのブッシュ政権は批判を受けながらも従来のイラク政策を継続し、国外に脱出したイラク人7000人をアメリカに受け入れる方針を発表した。では果たして日本はどの程度難民を受け入れているのだろうか。

日本が難民を受け入れるときには「条約難民」と「インドシナ難民」の2種類の難民を受け入れる体制になっている。ベトナム戦争終結前後にインドシナ3国(ベトナム・ラオス・カンボジア)に新しい政権が発足した折、それらの新政権になじめず国外に脱出した難民を「インドシナ難民」としている。ただしこの種類の難民は急速に減少している。難民事業本部の統計資料によるとインドシナ難民の海外の難民キャンプからの定住許可数は、受け入れ開始以来もっとも多かった1992年の411人を最後に、その後は急速に減少。2005年にはわずか19人が認定されたにとどまっている。

対してイギリスはどうであろうか。ヨーロッパの中でもイギリスは難民政策が寛容であるといわれ、難民も多く流入していることで有名だ。イギリス国務省発表の資料によると、2005年の申請者は前年に比べて24%減少し、それでも2万7395人だった。そのうち難民と認定されたものは1940人、そして人道的な理由などから庇護されたものは2795人。合計した庇護者数は4735人(全体の17.28%)である。
確かに、日本は割合からしてイギリスよりも認定申請数は多いものの、実際の人数はそのおよそ1/125である。歴史、文化、政策・方針、地理的条件が違うにせよ、同じ先進国としてその落差はいかがなものか。

最後に日本における「難民」の話で決して忘れてはならない歴史がある。第2次世界大戦前、ドイツにおける反ユダヤ主義政策が強まるにつれ、アメリカに向かうヨーロッパのユダヤ人は大西洋を渡る人々と、シベリア鉄道やインド航路を経て日本を経由して太平洋を越えるルートの二通りがあった。日本は1938年に外務省ユダヤ難民取り扱い規則をたてることで、ビザ発給の条件を難しくし、ユダヤ人が日本を経由することを難しくしようとした。ヨーロッパ情勢が悪化し、1940年にはナチスはポーランドを占領。そこからリトアニアに逃亡したユダヤ人が日本領事館に通過査証(トランジット・ビザ)を求めて殺到した。その当時、リトアニアの在カウナス日本領事館領事代理として杉原千畝が赴任していた。

本国にたびたびのビザ発給許可を要請したものの、ついに許可が下りず、杉原自身にソ連からの退去命令が下された。杉原は外務省の指示にそむいて、要件をみたさないユダヤ人にも半ば無制限でビザを発給することを決断。戦時中のユダヤ人犠牲者は何十万人ともいわれ、杉原が救えたのはごく一部であるが、6000人ほどの国外脱出を助けたといわれている。

難民条約が発効し、1982年以来、認定を受けた「条約難民」は合計376人と、ごく少数にとどまっている。他の先進国に比べても小数である。一方、50年以上前に杉原千畝がおよそ1ヶ月あまりビザを書き続け、救った人数は6000人ほど。そろそろ本腰をいれて、日本政府も難民政策に取り組むべきなのではなかろうか。

keyword

◆  法務部:「難民認定業務等の状況」

◆  国際移住機関(IOM):http://www.iomjapan.org/

◆  国連難民高等弁務官事務所(UNHCR):イラク情勢について(英語)

◆  英国国務省:難民政策に関しての資料(2005)

Movie

ひとりのエチオピア人少年がスーダンの難民キャンプにいたところから物語は始まる。1984年から85年にかけて、イスラエルとアメリカが指揮を執り、過酷な生活を強いられているエチオピア系ユダヤ人(ファラシャ)をイスラエルに帰還させた「モーセ作戦」を題材にした感動作。

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丹羽 康子/ Yasuko Niwa

英国オクスフォード大学で国際関係学を専攻し修士号取得。政治だけでなく金融知識も身に付けたいと帰国後、外資系証券会社に勤務する。日経CNBCにて経済キャスターを経たあと、現在は茶道家としての活動をすすめる側ら、金融教育やキャリア教育などの講演でも活躍中。

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