再生できる? いま最も注目されているES細胞研究
再生できる? いま最も注目されているES細胞研究

再生医療とは「病気や損傷により、機能低下や機能不全に陥った組織・臓器に対して、細胞の機能・再生機能を有効に活用して、組織・臓器の機能を再生させる医療」(再生推進センターWebサイトより)である。

子どものころ、トカゲの尻尾の端が切れても「生え変わるから大丈夫」という事実に驚いた。しかし21世紀になり医療技術も進歩し、もしかしたらSF映画の人間のように、一度病気で切断した四肢もトカゲのように生え変わってくるようになるのか。そんな夢の中でしか想像しえなかったような現象が今日、現実化する予兆がある。それが再生医療の分野であり、それを実現させるために今最も注目されている研究がES細胞(Embryonic Stem Cells 胚性幹細胞)研究なのである。

もう10年ほど前のことになるが「ES細胞の研究をしてノーベル賞をとりたい」と、留学先で生物工学の博士課程の友人が力説していた。学者たちがES細胞の研究成果を競い合うようにして研究に没頭していたことは、友人の話から読んで取れた。しかし競争はとんでもない事件を引き起こしてしまった。

2005年5月の当時、ソウル大学教授だった黄禹錫(ファン・ウソク)教授が科学雑誌Scienceに発表したES細胞の研究は画期的だった。11人の患者の皮膚細胞からクローン胚をつくり、そこからES細胞を取り出すことに成功したとの論文を発表している。この発表をうけて、黄教授のノーベル賞受賞を期待する声もあったのだったが、同年12月、研究の捏造が発覚。Scienceは黄教授らの論文を取り消した。またES細胞は、受精後まもないヒト胚を利用するため、倫理上の問題をメディアは取り上げた。

これを機にヒトES細胞研究が注目されるようになった。各国政府が倫理上の問題を取り上げながら、再びES細胞の研究に投資をするようになり、英米だけでなく、日本でもES細胞の研究が進められた。そして2007年6月、「マウス体細胞からES細胞と遜色のない能力をもった第2世代の人工万能幹細胞(iPS細胞)の開発に成功した」(京都大学)と発表。今後の課題としては人間にも応用可能なのか、また、実験段階で20%のマウスが癌で死亡している問題が解決できるのかどうか、などとみられている。

また、京都大学のプレスリリースでは今回の研究によって「倫理的問題や拒絶反応のない細胞移植療法の実現が期待されます」とある。日本の文部科学省はヒトES細胞の研究に関して現在規制を策定中である。ドイツではヒトES細胞の研究はすべて禁止となっているが、日本は「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」の規制の下で研究が可能となっている。この先、再生医療はどこまで進むのか。今後最も注目に値する研究分野である。

丹羽 康子/ Yasuko Niwa

英国オクスフォード大学で国際関係学を専攻し修士号取得。政治だけでなく金融知識も身に付けたいと帰国後、外資系証券会社に勤務する。日経CNBCにて経済キャスターを経たあと、現在は茶道家としての活動をすすめる側ら、金融教育やキャリア教育などの講演でも活躍中。

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